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露日関係の発展
露日関係の発展について
現在の露日関係の起点は、1992年1月27日、日本がロシア連邦をソ連の継承国として承認した時に遡る。今日に至るまで露日関係の法的基盤となっているのは、両国の交戦状態に終止符を打った1956年10月19日調印の日ソ共同宣言である。日ソ共同宣言は、平和条約締結に向け引き続き交渉を行っていくことを定めているが、未だ調印は実現していない。その背景には、南クリル諸島(択捉島、国後島、小千島列島)についての日本側の不当な領有権主張がある。
現在、露日関係はあらゆる方向に向け前向きに発展の途をたどっている。一方、貿易経済分野をはじめとする両国の協力関係が、様々な理由によりその潜在力からほど遠いものに未だ留まっていることは、双方が認めるところである。
2013年4月の安部首相によるロシア公式訪問の際に露日首脳が発表した共同声明は、両国の関係において最重視すべき方向性を示すものとして、露日関係の「ロードマップ」となった。その中で、二国間関係においてとくに重要な方向性として、以下の項目を挙げている。両国間の対話の活性化、貿易経済協力の拡大、軍事・国境関係当局の関係緊密化、議会間交流の促進、国際舞台における両国の連携の強化。
2013年4月の首脳会談の決定をふまえ、同年11月には第1回露日外務・防衛閣僚協議(2+2)が東京で開催された。また、平和条約をめぐる外務次官級協議も再開された。
2014年半ばから露日関係のベクトルがネガティブな方向へと変わったのは、日本政府が、ウクライナの内政危機を背景とするG7諸国の反ロシア政策を支持する決定をしたことと関係している。しかし、事態の進展に伴い、安倍政権は、ウクライナ問題とロシアとの関係推進とを『切り離す』考えを明らかにした。こうした動きを背景に、首脳レベルのコンタクトが活発化したのである。
2016年5月、ソチを実務訪問した安倍首相は、エネルギー、工業、保健、農業、中小企業の協力、先端技術、人的交流の8つ方向性に沿った協力プランを提示し、その具体化に向け、ハイレベル作業部会が設けられた。
2016年12月15日から16日にかけて、ロシア大統領として11年ぶりにプーチン大統領が日本を訪れ、その結果、12件の政府・省庁間合意と68件の民間ベースの契約が署名された。両国首脳は、南クリル諸島における共同経済活動実施のための協議の開始、元島民による墓参のための南クリル諸島ビザなし訪問の手続簡素化について、声明を発表した。
2016年12月の露日首脳会談での合意事項の実現による最初の成果については、翌年4月27日-28日の安倍首相によるロシア訪問の折りに協議された。2017年7月7日には、ハンブルグで開催されたG20 サミットに際して、露日首脳会談が行われた。同年9月7日、安倍首相は第3回東方経済フォーラム出席のためロシア・ウラジオストクを訪問した。二重課税を除去した改正租税条約をはじめとする多くの政府・省庁間合意、様々な分野での協力に関する約50件もの商業文書が署名された。同年11月10日、ダナンAPECサミットの際にも、露日首脳会談が行われた。
2018年5月24日-26日、安倍首相はロシアを公式訪問し、サンクトペテルブルグで開催された国際経済フォーラムに出席した。5月26日にはモスクワで首脳会談が行われた。ボリショイ劇場では両国首脳臨席のもと、『ロシアにおける日本年』『日本におけるロシア年』の開会式典が催された。省庁間で4件、商業ベースで7件の文書が署名された。その中には、デジタル経済と労働生産性向上の協力に関する文書も含まれる。安倍首相は、同年9月にウラジオストクで開催予定の第4回東方経済フォーラムへの出席を確認した。
露日両国間の協力は、安全保障の分野でも深まりを見せている。ロシア連邦安全保障会議と日本の国家安全会議の首脳部の間では、定期的に対話が行われている。2016年12月のプーチン大統領による日本公式訪問の成果として、露日外務・防衛閣僚会議『2+2』が再開された。
両国外務省は、緊密な対話の促進を支持している。2017年、両国は5回の外相会談を実施、その中には11月23日-25日の河野太郎外相によるロシア訪問も含まれる。
2018年2月16日には、ミュンヘン安全保障会議に際して露日外相会談が行われた。また同年3月20日-22日には、ラブロフ外相が東京を実務訪問している。
2016年に約4年ぶりに再開された露日外務次官級戦略対話も、定期的に行われるようになった。
2016年12月のプーチン大統領による日本公式訪問時の合意に基づき、南クリル諸島での共同経済活動の開始に向けた次官級協議(ロシアからはI. V.モルグロフ外務次官が出席)が始まった。共同経済活動の実現に向けた基本方針について、双方の了解が得られた。首脳会談では、優先的に取り組む協力活動として以下の5項目を特定した。風力発電、観光、ごみの減容対策、海産物の養殖、温室野菜栽培。2017年5月30日-31日、共同経済活動におけるビジネスの可能性を調査するため、日本の官民調査代表団がユジノサハリンスクを訪問し、サハリン州政府代表と会談を行った。同じく日本からのビジネス使節団が、二回にわたり(2017年6月27日-7月1日及び10月26日-30日)直接南クリル諸島を訪問した。
2017年12月および2018年4月には二つの作業部会で会合が開かれ、共同経済活動の商業的側面とサハリン州・北海道間の自由な往来のための枠組みの創設について、それぞれ協議が行われた。2018年6月29日にはモスクワで第3回作業部会会合が開催され、共同経済活動の商業的側面に関して協議が行われた。
両国の議会、政党間の関係も前向きに進展している。2016年10月31日-11月3日、ロシア連邦議会連邦院のV.I. マトヴィエンコ議長が日本を公式訪問し、安倍首相、議会両院議長(伊達参議院議長および大島衆議院議長)、与党自由民主党高村副総裁、公明党山口代表、民間外交推進協会(FEC)会員と会談を行った。またマトヴィエンコ氏は長崎市を訪問、現地自治体代表と会談した。
2017年には、参議院自由民主党・日露議員懇話会とマトヴィエンコ議長の日本公式訪問を機に創設されたロシア連邦院露日議会間・地域間協会支援協議会(会長: ロシア連邦議会連邦院国際問題委員長K.I.コサチョフ氏 )の二つの会合が開かれた。
2017年7月17日-18日、日露議員懇話会会長代理松山政司氏を団長とする国会議員団がモスクワを訪問した。同年9月には、公明党の山口代表を団長とする議員団がモスクワを訪れた。
2018年1月23日-26日、北海道の高橋はるみ知事の招聘により、国際問題委員長K.I.コサチョフ氏(東京、1月25日-26日)と経済政策委員長D.F.メゼンツェフ氏(北海道、1月23日-25日)を代表とするロシア連邦上院議員団が日本を実務訪問した。同年4月12日-15日には、E.B.シュレポフ議員を代表とするロシア連邦下院「対日議員グループ」一行が日本を訪れた。
2018年4月26日-28日、与党自由民主党の二階幹事長を代表とする国会議員団がロシアを訪問し、メドヴェージェフ首相兼『統一ロシア』党首及びマトヴィエンコ連邦院議長と会談を行った。『統一ロシア』と自由民主党の間では、協力に関する合意が調印された。
2018年6月23日-24日、日露議員懇話会とロシア連邦院露日議会間・地域間協会支援協議会の第3回会合がヤクーツク市で開催された。
元来、人と人との結びつきは政治のネガティブな影響にも安定しているものであるが、ここでも活発な人的交流が重要な役割を果たしている。文化フェスティバルは、両国の国民の間で大きな人気を博している。
2017年には、大規模な文化プロジェクトである『ロシアン・シーズン』が日本において好調なスタートを切った。開会式典には、O.Y.ゴロジェツロシア連邦副首相と安倍首相とが出席した。
同年7月7日から12月27日までの日程で、2006年から毎年続くロシア文化フェスティバルが開催された。
2018年3月23日-25日にはO.Y.ゴロジェツロシア連邦副首相が訪日し、林芳正文部科学大臣、加藤勝信厚生労働大臣、世耕弘成経済産業大臣と会談を行った。
2016年12月の首脳会談における合意により、2018年には『日本におけるロシア年』『ロシアにおける日本年』が開催されている。経済、情報通信、科学技術、地域間、文化的・人的分野における相互協力や、政治、安全保障といった分野にわたる120を超えるイベントが、『露日交流年』の枠組みにおいて開催される予定である。